能力を引き出すコーチングで、スタッフも管理者も大きく成長

笑顔で話す介護スタッフ

さまざまな専門職や、たくさんのスタッフが関わる介護の現場。

チームワークが問われる環境なだけに、現場を指揮する管理者が果たす役割はとても重要です。特に、スタッフ一人ひとりの能力を高め成長を促す人材育成は、チーム全体のパフォーマンスを向上させ、より良い介護サービスを実現するために必要不可欠。管理者として最も力量が問われるといっても過言ではありません。

しかし、単に知識やスキルを身に付けてもらうだけでは、つねに不測の事態が起こりうる介護の現場では不十分。「もっと一人ひとりが自主的に動いてくれたら、自分は本来やるべき仕事ができるのに」と、嘆く管理者も多いのではないでしょうか。

もしチームワークが上手くいかない原因が、あなた自身にあるとしたら、その問題解決の鍵となるのが「ティーチング」と「コーチング」。

今回、このふたつのキーワードから、チーム育成を成功に導くヒントを探っていきましょう。

「ティーチング」と「コーチング」の違い

上司が部下に教えている様子

「ティーチング」と「コーチング」は、いずれも人材育成の手法ですが、その意味は大きく異なります。まずは基礎知識として、ふたつの違いをみてみましょう。

●教える側が答えを与える「ティーチング」

先生が生徒に教えるように、答えややり方などを相手に与えるのがティーチングです。知識や経験が少ない相手にノウハウを身に付けてもらう段階においては、とても有効な方法です。

しかし、ティーチングの弱点は、与えた知識以上のものを習得してもらうことが難しく、指導者を超える人材が育ちにくいこと。

また、一方的なコミュニケーションになりがちなので、互いに刺激し支え合う対等な関係性には発展しづらいのです。 教える側が自分のやり方を押しつけたり、教わる側が受け身になって指示待ち人間になってしまう可能性があります。

●相手から答えを引き出す「コーチング」

一方、答えを与えるのではなく、あくまでもその人自身が持つ考えや視点に気づかせ、その人なりの答えを引き出していくのがコーチングです。新たに挑戦したいことや将来の目標に向け、さらなる成長を目指していく段階において効果を発揮する方法と言えます。 コーチングの主体は教わる側で、教える側は相手のやりたいことや考えをサポートする立場。「先生と生徒」ではなく、互いに対等な「仲間」として双方向のコミュニケーションを生み出し、それによって物事の問題や課題に対して自発的に解決に動いていく自主性を育みます。

チームワークに必要なのは、一人ひとりの自主性を育むコーチング

では、より良いチームワークの実現に向けて、最適な人材育成の方法はどちらでしょう?

その答えはもちろん、スタッフ一人ひとりの考え・行動するチカラ、つまり、自主性を育んでいくコーチングです。

介護の現場では予想できないことが日々起こり、その都度、ベストな対策や解決法を模索していく必要があります。そうしたなかで、言われたことだけをやる“指示待ち型”のスタッフがいると、互いの連携が図れずチームとして機能することができません。

なぜなら、人は他者から指示されたことに対しては、積極的に責任を果たそうとせず指示の範囲内で無難に行動する傾向にあるため、より大きな成果を期待できないからです。結果、現場での問題解決ができず、管理者が具体的に指示を出したり、自ら対応に当たる必要が生じてしまいます。

一方、自分自身で気づいた方法や自分で選択した行動に対しては、人は高いモチベーションを発揮。納得して導き出した答えだからこそ、最後まで責任を果たそうとします。

そのように、自ら考え行動できるスタッフ同士が連携しあって問題解決にあたれば、介護の現場はより良い方向に動きます。また、管理者は安心してスタッフに現場を任せられ、本来の仕事に専念することができるのです。

ストレスが軽減し、職場の雰囲気が良い方向に笑顔の介護スタッフ

さらに、コーチングをベースとしたスタッフとの関係性は、職場環境においてもメリットを発揮します。

一方的に教えるティーチングだけでは自ら考える力や行動する力が育たず、管理者からすると「言われないと何もしない」「決められたことしかできなくて、柔軟性がない」「自分から動こうとするやる気が見られない」など、さまざまな不満につながります。

実際、管理者として多忙な業務を抱えるなかで、日々起こる問題や課題ばかりに時間を取られてしまうとイライラしますよね。「なぜ、これぐらいのことができないのか?」と、つい怒りを口にしてしまうこともあるでしょう。そうなると現場の雰囲気は悪くなり、スタッフはますます萎縮して積極的な言動を控えるようになってしまいます。まさに悪循環ですね。

互いが対等な立場として、双方向でコミュニケーションを図りながらより良い答えを導いていくコーチングを実践する現場では、まず、一人ひとりが自分の意見を言いやすい風通しの良さがあります。一つの型にはまった考え方だけでなく自由に発想できるので、仕事へのモチベーションもアップ。何より、コミュニケーションが活発になることで人間関係も良好になります。

一人ひとりが考えながら動き、チームとして支え合えるので、管理者の負担やストレスも軽減。他への怒りやピリピリとした緊張感がなくなり、職場の雰囲気が改善されていくでしょう。

利用者様との関係性を高める、新しい時代の介護へ

介護の現場で重要なのは、質の高いサービスの提供を通して利用者様の「満足」を追求すること。そのためにも、「ES(職員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」という言葉どおり、まずはスタッフ一人ひとりが自らの仕事にやりがいや満足を持つことが大切です。

これまで述べてきたように、コーチングは一人ひとりの能力を引き出し、プロとしてのスキルアップを実現します。その結果、仕事へのモチベーションが高まることでサービスの質も向上。しいては利用者様の満足につながっていくのです。また、一方的な押しつけではなく、双方向のコミュニケーションによってより良い状況を目指していくという点は、スタッフと利用者様の関係性においても大きなメリットを発揮するようになります。

ますます重要な役割を果たす介護業界。ただ介助するだけでなく、より豊かな「生」を共に考え創り上げていく新しい介護サービスの実現に向け、コーチングというコミュニケーション手法は一つの重要な鍵となるでしょう。

自らの視野と価値観を広げ、互いを尊重し合うチームへ

笑顔で歩くスタッフ

コーチングで育まれるのはスタッフだけではありません。管理者もまた、相手を尊重することで自分では気づかなかった新たなものの見方や価値観を発見したり、物事を多面的に捉える力が養われ、介護業界のプロとしても、一人の人間としても、大きく成長できるでしょう。

人が能動的に動くためには納得することが必要です。それは他人から促されて得られるものではなく、自身のなかにある答えを認識することではじめて動機を得るもの。

そのために管理者はスタッフがやりたいこと、考えていることを引き出してサポートする存在となり、彼らが気づきを得て、変化していく様子を見守ります。その過程では答えを伝えることなく、辛抱強くコミュニケーションを重ねていくことに徹する必要があるのです。

相手の考えを引き出すためには、もちろん我慢も必要です。ときには苦しいこともあるでしょうが、その我慢がスタッフ一人ひとりを尊重し、自由に発想を広げより良い介護を追求していくことにつながるのです

コーチングはその人材を育む術のひとつであり、互いを尊重し合うチームへと成長していく、大きな原動力となるはずです。