管理者の心得。スタッフたちとの向き合い方を磨く

厚生労働省発表の「平成30年雇用動向調査結果」によれば、転職者が前職を辞めた理由として「給与等収入が少なかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係が好ましくなかった」といった項目が挙げられています。

あなたの場合はどうでしょう?転職を考えたきっかけは何でしたか?

お金のこと、労働条件そして人間関係。これらの要素は職種が違っても、常に付きまとう人事の悩みの種です。介護現場も早期離職、人材の定着率の低さなどが問題となっています。介護の世界でステップアップしていただくために、現場の介護スタッフと円滑な人間関係を結び、あなたをリーダーとした強いチームをつくるためのヒントをご紹介します。

自らビジョンを示し、スタッフにもケアの目標を持ってもらう

介護サービスの質を高めていくためには、施設としてのビジョンを掲げ、スタッフたちが目指すべき目標を示し牽引していくのが管理者の役目。といっても、実が伴わないような言葉だけ美しいビジョンは必要ありません。あなたが介護業界で果たしたいことを端的に示せば良いのです。

たとえば「いつでも笑顔で人と向き合う」「利用者様の望みを最大限叶える」といったベーシックな目標を。まずは施設全体で共有できる基本的なビジョンからスタートし、あなたが経験を積むなかで目標を更新していってください。

加えて、スタッフ一人ひとりにも個人目標を作ってもらいましょう。

「働きやすい職場」を理想で終わらせないためには、スタッフの「こういう仕事がしたい」という気持ちをなるべく叶えてあげることが大切。その気持ちと実際の業務のズレが大きいほど、働きがいは失われてしまいます。

「利用者様としっかり向き合い個別ケアを実践したい」と考えているスタッフに、細かな配慮が必要な利用者様を複数担当させるような仕事についてもらうといったミスマッチが起きてしまうと、とくに入職したばかりのスタッフは燃え尽きてしまい、早期離職につながるケースもあります。

まずは、一人ひとりの声を聞き、施設で行いたいケアの目標を設定してもらうこと。スタッフの希望をできるだけ叶えられるように、介護業界に精通したベテランスタッフの意見も取り入れ、「私は目標に向かって働けている」と感じられる人員配置を心がけましょう。

スタッフの数だけコミュニケーション方法が存在する

管理者側からのこまめなコミュニケーションや声かけが現場の雰囲気をやわらげ、スタッフたちの意見や要望を引き出しやすくします。

「この上司は自分の話を聞いてくれる」と感じてもらうことで生まれる信頼感は、スタッフからの不満や不安のいち早い発見につながり、改善策を講じるスピードも早まります。

ここでのコミュニケーションとは、「相手が気持ちよく受け入れられて、正しく理解してもらえる伝え方」のこと。

スタッフそれぞれの個性に合わせて、

  • 「どのような言動がその人のやる気を引き出すのか」
  • 「どのくらいの長さをかけて話せば理解してくれるのか」
  • 「どのような言い方ならば、素直に聞き入れてくれるのか」

を考慮したコミュニケーションを図る必要があります。

これまでの職場で頭ごなしに一方的な主張をしてきたり、こちら側の理解を待たずに話を進めてしまうような上司にあなたも困ったことがあるのではないでしょうか。話を聞ける人というのは、必ず相手の特性を見極めて応対しています。

あなたの思うベストな接し方を、それぞれのスタッフにとってふさわしい接し方に変えてみましょう。スタッフの特性に応じたコミュニケーションを行えば、おのずと信頼関係が築かれていきます。

それでは、スタッフたちの特性を知るにはどのような方法があるのでしょうか。

つづけてご紹介していきます。

職場コミュニケーションを高めるための方策

職場の円滑なコミュニケーションがやる気や成果につながるのは、介護業界だけでなくどのような業種でも同じ。

多くの会社でさまざまな取り組みが実施されています。ここでは、上司が部下を知るため、スタッフ同士が互いにつながるために考案された取り組みを取り上げます。

  • 1on1ミーティング
    週に一度、上司と部下が差し向いで30分ほどの対話をします。部下が仕事を通して経験した成功や失敗、悩みなどを上司に伝え、上司がその内容をフィードバックすることで教訓をつかみ、個人の成長につなげていきます。オーソドックスな形式から派生して、部署の上司だけではなく社長やスタッフ同士が話したり、「ぶっちゃけ会」と称してプライベートな話題も含めて自由に対話するスタイルなどもあります。
  • フリーアドレス制度
    スタッフのデスクを固定せず仕事の状況に応じて空いている席やオープンスペースなど自由な場所に移動して働くことのできる職場形態のこと。上下関係や部署間の壁がなくなり、上司と部下、スタッフ同士の自然なコミュニケーションを生みだしやすくします。
  • メンター制度
    新入社員などの育成対象(メンティ)を先輩社員(メンター)がサポートし、定期的な面談(メンタリング)を行いながら成長を促していく制度です。指導にあたる先輩社員を新規入職者と近い年齢にすることで、職場でのリアルな悩みを相談しやすくし、将来像をつかんでもらいやすくする狙いもあります。早期離職の防止や育成面での効果が期待される制度です。

このような代表的な取り組みのほかにも、社員が役員クラスを指名して会社が費用を負担して開かれる「役員ランチ」、メンター制度の立場を逆転させ、若手社員が上司のメンターになる「リバースメンター制度」など各社が創意を凝らしたコミュニケーション強化策を発案し実行しています。

その理由は、やはりどの業種や職場でも上司や部下の良好な関係、スタッフ同士のつながりが「働きやすさの改善」や「離職を防ぐ」ことを認識し、その対策としての職場コミュニケーションを重視しているから。

介護業界では新人のあなたもこれまでの人生経験や仕事の経験をもとに、スタッフたちと真摯に向き合えば理解し合えるはず。

まずはスタッフ一人ひとりに向けた声かけからスタートして、段階的に管理する施設の規模や特長にふさわしいコミュニケーション強化策を取り入れていきましょう。

縦横のコミュニケーションで理想の実現を

介護の現場ではチームとなって利用者様に対応していくため、スタッフ間の「ヨコのコミュニケーション」は不可欠。

そして同時に必要なのは、スタッフ間での不満やいざこざでヨコのコミュニケーションが上手く機能していないときに、管理者が察知し対処すること。

あなたとスタッフの「タテのコミュニケーション」で働く人たちのモチベーションを持続させ、ともに成長していきましょう。

自分本位ではなくスタッフたちの個性や特性に応じたコミュニケーションを図り、管理者として掲げたビジョンを実現させていきましょう。