ともに生きていく。コロナ時代に見えた介護施設のあり方

新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちの暮らしは大きく変化しました。もちろん介護施設も例外ではありません。しかし、「命の現場」である施設での介護サービス提供は毎日続いていきます。

新型コロナウイルスは介護施設の運営にどのような影響を与えたのでしょうか。これから施設管理者を目指すあなたに知っておいて欲しい、コロナ時代を迎えた介護施設のあり方を考えます。

介護施設の感染症対策

介護施設には、「密閉された空間」「手や声の届く範囲にたくさんの人がいる」「飛沫が届く範囲で会話、身体的接触が行われる」というクラスター発生の3条件がそろっています。そのため、新型コロナウイルスの流行以前から感染症対策が施されてきました。

厚生労働省が策定している「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」に基づいて感染対策委員会を設置することが、介護施設は義務付けられています。施設管理者をはじめとしたスタッフが手洗いや消毒、マスクの着用を徹底し、予防的観点からワクチンの接種をおこなっています。また、日々の介護サービスのなかで利用者様の状態を把握し、健康管理につとめ、スタッフたちの感染症に対する知識や理解を深めるための研修も実施しています。

それでも起こった集団感染

介護施設には、通勤するスタッフ以外にも、利用者様のご家族や出入りする業者、見学者やボランティアの方も来所します。感染症が施設内で自然発生することは少なく、多くは「外」からウイルスが持ち込まれてしまうため、施設を訪れるみなさんにも対策をお願いしてきました。しかし、残念なことに今回の新型コロナウイルスは全国の介護施設で集団感染を引き起こしています。

ある施設では、「陽性」と判明した利用者様と「陰性」の利用者様に建物の1階と2階にそれぞれ移動していただき、危険区域と安全区域に分けるゾーニングをおこないました。しかし、認知症の方に感染予防策を十分に理解してもらうことができなかったため、認知症を患っている利用者様が徘徊してしまう問題が起きました。

こうした事例を鑑みて、厚生労働省からは「介護老人保健施設等の入所者は高齢で重症化リスクが高い特性がある。感染した場合は原則入院」とする通知が出されましたが、なかなか入院先が決まらない実情もあったようです。

救えたはずの命を助けられなかった介護スタッフにとって「孫のようにかわいがってくれていた人」が日々重症化していくのを目にするのはいたたまれない現実だったことでしょう。利用者様の命と暮らしを守る介護施設は、コロナウイルスが改めて示した感染症の怖さを教訓として、これからの施設運営を考え直す必要に迫られています。

コロナ時代の介護施設のあり方

新たな感染症対策として、多くの介護施設では下記の措置がとられ、当たり前だった日常が制限されてしまいました。

  • 利用者様の外出制限
  • 家族、親族との面会制限
  • 施設内でのボランティアなどによるイベントの中止
  • 訪問理美容や訪問歯科の中止
  • 見学や研修の受け入れの中止
  • スタッフの時差出勤

とくに、肉親を施設にあずけているご家族にとって「面会制限」は大きな不安材料となります。「うちの母は元気でしょうか?」「施設の感染症対策はどうなっていますか?」といった問い合わせが増えているようです。

その対策として、スマホやパソコンを使い、対話してもらう「オンライン面会」を実施している施設もあります。利用者様もそのご家族も、画面越しとはいえ、お互いの顔をみるだけでとたんに表情が明るくなるそうです。

介護におけるICT化はまだまだ進んでいないのが現状です。しかしこれを機にバイタルや食事量などのデータや、介護ノート、ケアプランの作成をデジタル化し、画像や動画も用いながらスタッフ同士だけでなく利用者様のご家族とも共有してもらえば、いっそうの安心を感じてもらえるはず。工夫をこらし、ご家族の不安が少しでも解消されるような手立てを考えることが大切です。

また、「外出制限」は利用者様がストレスを抱えてしまう要因となります。

しかし、外出制限の本質は大勢の人が集まる場所へ出かけるのを避けること。施設の近隣をスタッフとともに散歩し、太陽を浴びることは、注意を払いながらおこなえば問題ない行動です。利用者様の緊張をほぐし、適度な運動をしてもらうことにもつながります。

たとえ、一時的に新型コロナウイルスの蔓延が終息したとしても、冬場のインフルエンザへの対策などウイルスと賢く付き合っていくのは介護施設の宿命です。

介護は人と密接に関わらなければ成り立たない仕事。むずかしい状況のなかでも、利用者様やご家族の満足度を高める努力が必要です。そこで求められるのは、今までの介護業界の常識にとらわれない知恵やアイデア。あなたがこれまで培ってきた経験や視点は必ず役立ち、介護の現場に応用できます。ぜひコロナ時代を迎えた介護施設づくりにあなたの力を活かしてください。

つながることは「生きる」こと

介護施設が誰にでも開かれた場所であるというのは、重要なことです。

地域の方々やボランティアのみなさんに介護施設の存在を認識してもらい、気軽に訪れてもらって交流する。介護スタッフたちだけではなく、地域を巻きこんで、介護の現場を閉ざされた空間にしないことが利用者様の笑顔を生みます。

そんな交流の機会を新型コロナウイルスは奪っていきました。人と人が密に接し、ふれあい、互いの想いを伝えあうという人間が本能的にもとめる「つながりたい気持ち」に壁を作ったのです。

ある介護施設では、裁縫が得意な利用者様を中心にみんなで手作りマスクを作り始め、普段ボランティアに来てくれていた学生や主婦の方に届けてとても喜ばれたそうです。施設内でもマスク作りは人気で、思い思いの模様の布を持ち寄り、利用者様どうしで楽しみながらマスク作りに励むことで、笑顔があふれたそうです。

マスク不足を逆手にとったこんな活動が拡がれば、「コロナに負けない」気持ちで日々を過ごしていける。どんなことでもみんなで共有して、つながっていくことで毎日の生きがいが生まれることに気付かされます。

介護施設は、人と人とのつながりを介護サービスを通して確認できる場所です。利用者様とスタッフ、地域の方々とのつながりを深め、想いを共有できる施設づくりを管理者であるあなたの手で実現してください。